コラム

道路冠水は何cmから危険?車が水没したときの脱出方法や運転時の注意点を元白バイ隊員が解説

冠水道路後ろに車がいた時の対処法を説明するフレスタ安全運転教習所代表矢久保真

近年、短時間に激しい雨が降る「ゲリラ豪雨」などによって、道路の冠水や車の水没・浸水被害が各地で発生しています。気候変動に伴い、大雨の頻度や強度が増加することも懸念されており、道路冠水は決して他人事ではありません。突然の激しい雨によって、いつも走っている道路が短時間で冠水してしまう可能性もあります。

道路冠水は、一見すると「少し深い水たまり」のように見えることがあります。しかし、「このくらいなら行けそう」「前の車も通れたから大丈夫」と安易に進入してしまうと、車が動かなくなるだけでなく、状況によっては車内に閉じ込められるなど命に関わる危険があります。

そこで今回は、元警察官・元白バイ隊員として冠水現場での対応を経験してきた立場から、「水深何cmから危険なのか」「冠水で車が止まるのはなぜか」「水没したらどう脱出するのか」など、道路冠水から身を守るために知っておきたいポイントを解説します。

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道路冠水は「少し深い水たまり」と考えないことが大切

冠水している道路を走行する車
道路冠水で特に怖いのが、道路の手前では浅い水たまりに見えていても、先へ進むにつれて道路が低くなり、急激に水深が深くなっている可能性があることです。一度進入してしまうと、後ろから別の車が来て引き返せなくなり、「前に進むしかない」という状況になることもあります。

もちろん、危険な状態になれば道路を通行止めにするなど対応がなされますが、大雨によって複数箇所で同時に冠水が発生した場合、すべての場所へすぐに警察官などを配置し、通行止め等の対応ができるとは限りません。

つまり、冠水が発生した直後は「通行止めになっていないから安全」とは限らず、最終的には運転者自身が「進むのか、引き返すのか」を判断しなければならない場面もあります。

道路冠水が起こりやすい場所は事前に確認できる

ハザードマップで事前に冠水しやすい道路を確認する様子
道路冠水から身を守るために、まずおすすめしたいのが普段利用する道路の冠水しやすい場所を事前に把握しておくことです。
国土交通省や各自治体などでは、道路冠水注意箇所などの情報を公表しています。アンダーパスなど、地形的に冠水しやすい場所が地図や一覧で確認できる場合があります。普段利用するすべての道路を覚える必要はありませんが、少なくとも次のような道路については、一度確認しておくようにしましょう。

  • 自宅周辺の道路
  • 通勤・通学で利用する道路
  • 子どもの送迎で利用する道路
  • 大雨の日にも利用する可能性が高い道路

アンダーパスや周囲より低い道路は特に注意

アンダーパス
冠水しやすい場所の代表例が、道路や鉄道などの下を通るアンダーパスです。
アンダーパスは周囲より道路が低くなっているため、短時間に大量の雨が降ると水が集まりやすくなります。場所によっては「冠水注意」「大雨時冠水注意」などの注意看板が設置されています。

しかし、注意が必要なのはアンダーパスだけではありません。周囲より低くなっている道路、住宅街のくぼんだ場所、排水が追いつきにくい道路などでも冠水は発生します。行政などが公表している冠水注意箇所以外でも、条件によっては冠水する可能性があるため、「マップに載っていないから大丈夫」と考えないようにしましょう。

道路冠水は何cmから危険?

水深が何㎝までだったら車は走れるのか考えている女性
「結局、水深何cmまでなら車で走れるの?」道路冠水について、もっとも気になるポイントの一つだと思います。
しかし、「○cmまでなら絶対に大丈夫」と一律に判断することはできません。

車種によって車高や床面の高さ、吸気口や電気装置などの位置が異なるうえ、道路の形状や水の流れ、周囲の車によって発生する波など、さまざまな条件が影響するためです。国土交通省では、水深が車両の床面を超えると、エンジンやモーター、電気装置などに不具合が発生するおそれがあるとして注意を呼びかけています。

一般的な乗用車では床面が20〜30cm程度の場合も

結論からお伝えすると、「水深○cmまでなら安全に走行できる」とズバリお伝えすることはできません。
なぜなら、車種によって車高や床面の高さ、吸気口などの位置が異なるうえ、道路の形状や水の流れなどによっても危険性が変わるためです。
今回、参考にレンタカーなどで実際に使われることが多いコンパクトカーを使って、地面から車両の床面付近までの高さを確認してみました。

一般的にレンタカーなどで多い車種のコンパクトカー
一般的なコンパクトカーの床の高さを調べている様子

車種によって異なりますが、私が確認した車では、低い部分はおおよそ20〜30cm程度の高さでした。ただし、これは「水深20〜30cmまでなら走行できる」という意味ではありません。

大雨の中では水深を正確に判断することは難しく、手前は浅くても道路の先で急に深くなっている可能性もあります。そのため、数字はあくまでも危険性を理解するための目安として考え、「○cmだから行ける」と判断して冠水した道路へ進入しないことが大切です。

「タイヤの半分くらいだから大丈夫」という判断も危険

冠水した道路を目の前にしたとき、「まだタイヤの半分くらいだから大丈夫そう」と判断してしまう方もいるかもしれまが、道路は必ずしも平坦ではありません。手前では浅くても、その先だけ大きくくぼんでいて、急に水深が深くなる可能性があります。

「○cmだから行ける」「タイヤのこの位置までなら大丈夫」という数字だけを基準に進入するのではなく、深さが分からない冠水道路には入らないことを基本に考えましょう。

なぜ冠水した道路で車が動かなくなるの?

なぜ冠水した道路で車が動かなくなるの?かを説明するフレスタ安全運転教習所の代表矢久保真
冠水した道路で車が立ち往生している映像を見て、「どうして水の中に入っただけで車が止まるの?」と思ったことがある方もいるでしょう。

ガソリン車は吸気口から水を吸い込むおそれがある

ガソリン車は、外から空気を取り込んでエンジンを動かしています。冠水した道路を走行すると、その空気の取り込み口から水を吸い込み、エンジンが停止したり故障したりする可能性があります。
そのため、車内まで浸水していなくても、冠水によって突然車が動かなくなることがあるので注意が必要です。

水深が浅くても「波」で危険になることがある

もう一つ注意していただきたいのが、冠水した道路で発生する波です。
自分の車がゆっくり走っていて、水深もそれほど深くないように見えていたとしても、対向車が速度を出して通過すれば、大きな波が発生することがあります。その波が車体やエンジンルーム付近へ押し寄せることで、水の影響を受ける可能性があります。周囲を走る車、水の流れ、道路の形状などによって状況は変化するため、見た目が浅いからといって安易に進入しないことが大切です。

「前の車が通れたから自分も大丈夫」は危険

冠水した道路を走行する車
私が警察官として冠水現場へ対応していたとき、冠水した道路で車が動かなくなってしまった運転者から、次のような話を聞くことがありました。

  • 「前の車が通れたので、自分も行けると思った」
  • 「後ろに車がいたので、止まれずに進んでしまった」

しかし、前を走る車と自分の車では、車高や構造などが異なります。同じ場所を通ったからといって、自分の車も同じように通過できるとは限りません。
また、冠水した道路の前で止まると、後続車から急かされているように感じることもあるでしょう。それでも、少しでも恐怖心や危険だと感じた場合には「進まない」という判断をしてください。後ろに車がいることよりも、自分や同乗者の安全を優先することが大切です。

EV(電気自動車)なら冠水道路を走っても大丈夫?

EV(電気自動車)は冠水道路を走行できるのか説明する画像
「EVにはエンジンの吸気口がないから、冠水しても大丈夫なのでは?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。しかし、EVだからといって冠水道路を安全に走れるわけではありません。EVにはモーターや駆動用バッテリーをはじめ、さまざまな電気装置が搭載されています。浸水によって、こうした装置に不具合が生じるおそれがあります。

つまり、「ガソリン車だから危険、EVだから安全」という考え方はできません。車の種類にかかわらず、冠水して深さが分からない道路には安易に進入しないようにしましょう。

冠水した道路で車が止まったらどうする?

もし冠水道路に入って車が停まってしまったらを説明するフレスタ安全運転教習所の代表矢久保真
万が一、冠水した道路に入ってしまい、車が動かなくなった場合は「どうやって車を動かすか」よりも先に、自分や同乗者の命を守ることを考えてください。

大雨では、短時間のうちに水位が上昇することがあります。「もう少し待てば水が引くかもしれない」「エンジンがもう一度かかるかもしれない」と車内で待っているうちに、さらに水位が上がってしまう可能性があります。

ドアが開くうちに早めに車外へ脱出する

冠水時車のドアが水圧で開かなくなる水深の高さ
車の周囲の水位が上昇し、ドアの半分程度の高さまでなってくると、水圧によってドアを内側から開けることができなくなります。そのため、車が動かなくなり、さらに水位が上昇する危険がある場合は、ドアが開けられるうちに安全な場所へ避難することが重要です。
脱出する際には、車の周囲の水の流れや深さだけでなく、後方から進入してくる車などにも十分注意してください。

ドアが開かない場合は窓から脱出する

冠水時、ドアが開かない場合は、ドアが開かない場合は窓から脱出することを説明するフレスタ安全運転教習所の代表矢久保真
水位が上がり、水圧によってドアを開けられない場合は、窓からの脱出を考えます。窓が開く状態であれば、窓を開けて車外へ脱出します。
ただし、浸水によって電気系統に不具合が生じると、窓が開かなくなる可能性もあります。そのような状況に備えて、車内に緊急脱出用ハンマーを用意しておくことも重要です。

緊急脱出用ハンマーは運転席から手の届く場所へ

緊急時脱出用ハンマーで窓を破ろうとする女性
「窓が開かなければ、ヘッドレストやスマートフォン、傘など硬いもの割ればいい」と考えている方もいるかもしれません。しかし、自動車の窓ガラスは簡単に割れるものではありません。また、車種によって使用されているガラスの種類も異なります。

万が一に備えて、自動車用の緊急脱出用ハンマーを準備し、運転席からすぐに手が届く場所へ設置しておくことをおすすめします。いざという時に使えなければ意味がないため、トランクの奥などではなく、ドアポケットなど取り出しやすい場所を選びましょう。

車内に水が入ってきても最後まで脱出を諦めない

すでに車内へ水が入り、ドアが開かない状態になった場合でも、脱出を諦めないでください。車内外の水位差が小さくなることで、ドアにかかる水圧の差も小さくなり、ドアを開けられる可能性があります。

ただし、これはすでに非常に危険な状態です。可能な限りこの状況になる前に、危険を感じた段階で早めに車外へ避難することが何より重要です。

冠水した車は水が引いてもすぐにエンジンをかけない

冠水した車は水が引いてもすぐにエンジンをかけないことを呼びかける画像
大雨が収まり、水が引いたあとにも注意が必要です。一度浸水した車は、自分の判断ですぐにエンジンをかけないようにしましょう。浸水した車では、電気系統のショートやエンジンなど損傷につながる可能性があります。

見た目では問題がないように見えても内部まで水が入り込んでいることがあるため、ロードサービスや販売店、整備工場などの専門業者へ連絡し、確認してもらいましょう。

大雨のときは「通行止めになっていない=安全」と考えない

通行止めになっていないが冠水し危険な道路を説明する画像
元警察官として、今回特にお伝えしたいのがこの点です。
大雨のとき、「まだ通行止めになっていないから、この道路は通っても大丈夫」と判断しないでください。

私が警察官だった頃も、大雨によって管内の複数の道路が同時に冠水することがありました。警察や道路管理者も対応を行いますが、何箇所も同時に冠水が発生した場合、すべての場所へ即座に対応できるとは限りません。冠水が始まったばかりで、まだ規制が行われていない可能性もあります。

だからこそ、最初の判断は運転者自身に委ねられる場面があります。「通行止めになっていないから大丈夫」ではなく、目の前の状況を確認し、少しでも危険を感じたら進入しないことが重要です。

後続車がいても「止まる勇気」を持つ

実際にアンダーパスなどを走行すると、冠水している場所の手前で判断する難しさを感じます。
自分の後ろに車が何台もいると、「ここで止まったら迷惑かもしれない」「後ろの車も来ているから進まないと」と焦ってしまうかもしれません。しかし、そこで無理に進入し、車が動かなくなれば、自分だけでなく同乗者も危険な状況に置かれてしまいます。

大雨のときには、周囲の車につられるのではなく、危険だと感じたら「止まる」「引き返す」「迂回する」という選択肢を持っておきましょう。

道路冠水から身を守るために覚えておきたいポイント

雨の日に運転する女性ドライバー
最後に、大雨や道路冠水に遭遇した際に覚えておきたいポイントを整理します。

  • 普段利用する道路の冠水注意箇所を事前に確認しておく
  • アンダーパスや周囲より低い道路では特に注意する
  • 深さの分からない冠水道路には安易に進入しない
  • 「○cmまでなら大丈夫」という数字だけで判断しない
  • 前の車が通過できても、自分の車も通れるとは考えない
  • 後続車がいても危険なら進入しない
  • ガソリン車だけでなくEVでも冠水道路への進入を避ける
  • 車が動かなくなったら、車よりも自分や同乗者の安全を優先する
  • 水位が上がる前に早めの脱出を考える
  • 緊急脱出用ハンマーを手の届く場所に準備しておく
  • 浸水した車は水が引いてもすぐにエンジンをかけない
  • 「通行止めになっていない=安全」と判断しない

大切なのは、「まだ行けるだろう」ではなく、「危ないかもしれない」と考えて早めに行動することです。

さいごに

今回は、道路冠水が起こりやすい場所や冠水道路を走行する危険性、車が動かなくなる原因、EVとの違い、万が一水没してしまった場合の脱出方法などについて解説しました。

道路冠水は、日常的に経験するものではないため、「自分には関係ない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、短時間に激しい雨が降れば、普段利用している道路が突然冠水する可能性があります。「前の車が行ったから大丈夫」「まだ通行止めになっていないから大丈夫」「このくらいの水深なら大丈夫」と安易に判断せず、少しでも危険を感じたら進入しないことを覚えておいていただきたいと思います。

今回の内容については、実際に冠水注意箇所として公表されているアンダーパスや車両を使いながら、動画でも詳しく解説しています。道路冠水の危険性や、大雨時にどのような判断をすればよいのか確認したい方は、ぜひあわせてご覧ください。

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